
春が終盤に差し掛かり、夏の気配を感じるこの季節。こういう時につい思い浮かべるのがキンキンに冷えた氷の世界…という人も多いのではないでしょうか。「OW」でもシーズン2「大いなる頂」の開幕にあわせて、このゲーム屈指のひんやり系コントロール用マップ「ANTARCTIC PENINSULA」の大規模なリワークを行いました。
2023年の導入後、去年末まで配信されていたこのマップがどのような理由と経緯で大変身を遂げたのか――レベル・デザイナーとアーティストが総力を挙げて取り組んだこのリワーク(&ペンギンの大量投下)の裏側を注目ポイントとあわせてご紹介していきます。
新たな氷の世界
ANTARCTIC PENINSULAの大規模リワークに至ったわけはいくつかありますが、特に大きな理由として挙げられるのがコミュニティからのフィードバックでしょう。皆さんからはこのマップの難点に関する建設的かつ愛にあふれた意見を数多くいただいており、その大半が「マップが暗く、色彩に乏しい」、「狭苦しい」、「目標地点とルートがわかりづらい」という3つの要素に集中していました。
こうした要素が揃っていてはせっかくのコントロール・マップも面白みがありません。マップ投票におけるANTARCTIC PENINSULAのピック率が他のマップと比べて圧倒的に低い点も考慮して、私たちはこのマップのリワークに踏み切りました。
今回のリワークでは、ビジュアル面にテコを大きく入れ、各エリア(ポイントA、B、C)に個性をさらに付け加えたほか、そのレイアウトもシンプルにしました。他の種類のマップと異なり、3つの小さなエリアで構成されているのがコントロール用のマップ。エリアそれぞれの個性とトータル・パッケージをまんべんなく考慮する必要があるので、コントロール用マップのリワークは楽しくやりがいもある一方で複雑なプロセスが要求されます。新たなマインド・セットで臨めたとはいえ、この南極大陸のリワークはパズルの如く私たちを大いに悩ませました。
マップのリワークはたいていの場合、フィールドの構造そのものを担当するレベル・デザイン・チームの主導で行われます。今回のリワークでもレベル・デザイナーは「目標地点へのルートとフランカー用の迂回路の単純化」、「より大規模なチーム戦を想定したポイント周辺のオープン・フィールド化」という2つの目標に基づいて、3つのエリアの構造――特に「地下」エリアの狭苦しいレイアウト――に大きく手を加えました。
もちろん、マップのリワークはレベル・デザイナーの仕事だけで成り立ちません。マップのビジュアルを担当するデザイン・チームも並行してリワークに初期段階から携わっています。デザイン・チームのフレッシュなアイデアがレベル・デザイナーたちを刺激し、レベル・デザイナーが生み出した新たなレイアウトがデザイン・チームのアイデアをさらに膨らませる…こうした相互作用が繰り返されるうちに、ANTARCTIC PENINSULAは現在の形へと近づいていきました。お決まりのビジネス・フレーズでいうところの「部署間のコラボレーションが生み出すシナジー」ですが、マップのリワークはこの重要な要素無くして成り立ちません。こうして2つの部署間でマップの完成度をある程度高めたところで、Team 4(開発チーム)全体を巻き込んだプレイテストを実施。テスト参加者から集めたフィードバックをもとにブラッシュアップが進められます。
他のマップのリワーク時を含め、このブラッシュアップの段階でテクニカル・アーティスト、VFX担当、サウンド・デザイナーが参加します。今回はビジュアルとレイアウト両面の大刷新ということもあり、この3部署の仕事量はいつものリワーク以上。ですが、彼らはこのリワークで初めて導入されたトラップ要素(後述を参照)の開発に喜んで手を貸してくれました。また、外部のアーティストもマップのリワークにいつも協力してくれています。彼らと今回のリワークで主に取り組んだのはマップの色調――生き生きとして温かい印象を持ったカラー・パターンの導入でした。
色彩豊かな南極を目指して
私たちは常にレイアウトなどの明確化を常に意識してマップ・リワークに臨んでいますが、皆さんがリワーク後のマップに新鮮な印象と新たな楽しみを見出せるよう、さらなるワクワク感をマップに取り入れることも忘れていません。ANTARCTIC PENINSULAはもともと暗く危険な環境を連想させるようなモノトーン調のマップ。それを今回のリワークで明るい色調に改め、基地が活動していたころの活気を連想させるような雰囲気に仕上げました。この項目では、そのビジュアル面の注目点とレイアウトの変更点を中心に、各エリアの詳細をご説明します。
掘削リグ(旧「ラボ」)
皆さんもコントロールをプレイした際に「どのエリアでプレイするのか他のプレイヤーがわかっていない」、「そのプレイヤーにエリアを説明しようとしても上手く言えない」という状況に陥ったことはあるのではないでしょうか。この課題に対処するために、私たちは「ラボ」エリア(ポイントA)の名前を「掘削リグ」に改め、それに見合った「OW」史上最大級のドリルを目標地点に配置しました。ドリルはかなり目立つ大きさなので、今後はより直感的にエリアを識別または説明できるはずです。

レイアウト面での変更は、3エリア中最も少なめです。目標地点を拡張したほか、チーム戦も展開できる新たなバック・ルームをポイントの周囲に設けましたが、主な変更点はビジュアルといえるでしょう。新マップでは白と青で構成される氷の世界とコントラストを成すようにオレンジとイエローがふんだんに使われていますが、これは実際の南極基地を参考にしたものです。
砕氷船
砕氷船エリア(ポイントB)は氷塊に埋もれた船をコンセプトとしたエリアですが、この「船」というアイデンティティが弱く、船を舞台にしたエリアであることをいまだに知らないプレイヤーも多くいます。そこで、このエリアでもアイデンティティの明確化を押し進めました。
「凍り付いた船」というテーマだけではインパクトに欠け、エリアも生き生きとしない。「いま海に浮かぶ氷の上にいるんだ」という点も意識してもらうには――そこで着目したのが、以前からコミュニティに好評を持って迎えられていた「リスポーン・エリア内の巣」。その主であるペンギンたちを文字どおり大量にキャスティングしました。ラウンド開始時にはペンギンの群れが海へと飛び込む様が見られるほか、さらに目を凝らせば、さまざまなペンギンをエリアの各地で(そして他のエリアでも)目撃できます。
「可愛いのはいいけど、このペンギンのせいでゲームのパフォーマンスが落ちるのでは?」とお考えの人はどうぞご安心ください。ペンギンのアニメーションにはパフォーマンス面の影響がきっちりと考慮されており、場合によっては背景に配置したり、サイズを小さくするなどして、フレームレートへの影響を無くしています(ちゃんと可愛いだけではないのです)。

レイアウト面の改善にも大きく力を入れました。目標地点へと続くルートが明確になったほか、このエリアの難点でもあったチョーク・ポイントも複数拡張。さらには船内のルートがわかりやすくなるよう、通路や空間を種類別に青や緑で色分けしました。これは他のエリアにも導入したテクニックですが、目標地点へと続く最短ルートのパイプやその他装飾を明るい黄色でまとめています。
アノマリー(旧「地下」)
今回のリワークで最も大きく手を加えたのがこのエリア(ポイントC)です。以前は暗い氷の洞窟内にさまざまなルートが入り乱れるように配置されており、これが原因でチームがてんでんバラバラに動いてしまうことが多々ありました。
エリアとしてのアイデンティティも薄く、皆さんから抱かれる印象は「嫌なエリア」のみという始末。そこでこのエリアの目標地点には「アノマリー」と呼ばれる天候制御デバイスのプロトタイプを軸とした吹き抜けと、「OW」初となるトラップを設けました。このトラップは目標地点で高度を上げすぎたプレイヤーを短時間フリーズさせるもので、「長期間放置されたアノマリーが誤作動した末に生まれた環境」という設定が付いています。

このエリアにも、掘削リグと同様にオレンジのアクセントを加えて温かみや明るさを出したほか、目標地点への最短ルートを示す黄色のアクセントをちりばめています。また、Team 4が誇るライティングのスペシャリストが作り出した幻想的な光と影のコントラストにも注目です。
レイアウト面での主な変更点を挙げると、まずフランカーとスナイパーの溜まり場になっていた上階の部屋を削除しました。新たに設けた目標地点への新ルートも周囲からはっきりと見渡せるため、今後はチーム全体での行動がより重要になることでしょう。また、トラップこそ設けましたが、複数の階層で構成されたこのエリアならではの面白みも生かすべく、壁面に高機動ヒーロー&射撃系ヒーロー用のドリルの穴を新たに空けています。

以上、「新南極マップ」のご紹介でした。もし今回と同じようなリワークが必要だと思うマップがありましたら、どうぞ気軽にフィードバックをお送りください。私たち開発チームにとって、皆さんのフィードバックはこれ以上ない重要なデータです。また次回の「1週間を振り返る」でお会いしましょう!
(あ…どうか、ペンギンを見かけたとたんにバシバシ撃つのは控えてくださいね)