1週間を振り返る:マッチメイキングの裏側

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1週間を振り返る:マッチメイキングの裏側

皆さんがマッチを検索する際に重要となる「マッチメイキング」。今週の「1週間を振り返る」では、「オーバーウォッチ」の中でも特に複雑なこのシステムの裏側をご紹介していきたいと思います。

私たちがマッチメイキングのシステムを調整するうえで掲げている目標は、「皆さんに楽しいマッチをお届けすること」と、「長時間の待機を回避すること」の2つです。2つ目は読んで字のごとく単純な目標ですが、1つ目の「楽しさ」は、もう少し説明しないとちょっとわかりづらいかもしれません。

私たちチームは「楽しさとは公平な環境から生まれるもの」という考えを持っています。マッチに参加した両チームの勝利のチャンスを可能な限り五分五分に近づけつつ、あとは各参加プレイヤーの判断内容や、戦略、ビッグプレイに、最終的なマッチの結果を委ねる…。高い競技性、そして「熾烈だけど勝てる可能性がある」と皆さんが思えることは、単なる勝利以上に重要であり、自分の行動次第でマッチの勝敗が大きく変わると感じられる環境こそ「オーバーウォッチ 2」の魅力。私たちはこの考え方に沿ってマッチメイキングの調整に努めています。

それでは、いま掲げた目標を実現するうえで、私たちがコア・ゲーム・モードとスタジアムで何を行っているのか、その詳細をご説明しましょう。

マッチメイキングに関する基本知識

細かい話をする前に、まずはマッチメイキングの仕組みに関する説明から。各「OW2」プレイヤーには、個々の実力を数値化したマッチメイキング・レート(MMR)が設定されており、この数値がマッチメイキングに利用されています(このMMRをライバル・プレイで可視化したものが「ダイヤモンド3」のようなスキル・ティアです)。このMMRの分布図は「0.0」を中央とする釣鐘曲線で構成されており、0.0を基点に数値の増減幅が大きくなればなるほど、プレイヤーの数が激減していきます。

CompetitiveRankDistro.png

たとえば、MMRが2(マスター5の高ランク帯に相当)のプレイヤーがいるとしましょう。そのプレイヤーがキューに入ると、システムは同じく2と評価されている他のプレイヤーを探します。一定時間内にまったく同じMMRのプレイヤーでロビーを満員にすることができなかった場合、システムは対象のMMRを前後に広げてさらなる参加プレイヤー――具体的にはマッチのバランス維持の観点から、MMRが1.9から2.1のプレイヤー――を見つけようとします。

ベストなマッチを目指して

5v5の場合、ほぼ同じ実力のプレイヤー10人を揃えられれば理想的ですが、同スキルの参加プレイヤーが不足してしまうと、そうも言っていられないもの。

マッチングの条件である程度妥協しつつ、バランスが取れたマッチを可能な限り実現するべく、私たちはいくつものマッチメイキング向けのシステムを活用しています。そのうちの1つが、「ロール・デルタ」と呼ばれる、両チームのプレイヤーの実力をロール単位で揃えるシステムです。たとえば、片方のチームのタンク・プレイヤーがMMR1.5の評価を受けていた場合、ロール・デルタは相手チームのタンク枠に、同じMMR1.5のプレイヤーを可能な限り割り当てようとします。参加プレイヤーのMMRをロール単位で揃えれば、直接交戦する相手の実力が同等になるので、ただMMRの振れ幅が近いプレイヤーをマッチに詰め込んだ時よりも、ストレスの少ないマッチが実現するというわけです。

マッチのクオリティをある程度維持しつつ現実的なマッチングを進めるためのシステムはほかにも数多くあり、いま説明したロールデルタのように「ロール(プレイヤー)単位の拮抗」を考慮するものもあれば、「チーム全体の統一性」を考慮するものもあります。

チーム全体の統一性は、ロール・デルタのシステムにも一部加味されています。というのも、仮にタンク・プレイヤー同士の実力がほぼ同一だとしも、一緒にマッチへと参加するダメージ・プレイヤーとのMMRの差がかなり大きいと、MMRが同等なプレイヤーだけを揃えた場合はもちろんのこと、チーム全体のMMRの合計を揃えた時よりもマッチの質が著しく落ちることが、今までの分析で判明しているためです。たとえば、ライバル・プレイでいう所のシルバー2のプレイヤーで構成されたチームと、ダイヤモンド2のチームの間ではスキルに加えて、連携やコミュニケーションの方法にも大きな差があります。これら異なるティアのプレイヤーを同じチームに振り分けてしまうと、どちらのスキル帯のプレイヤーもお互いが間違ったプレイをしていると感じてしまいがちです。

「OW2」ではチーム全体の統一性も考慮していることもあり、チーム単位でのフェアなマッチを比較的容易に実現できています。先述のライバル・プレイを例に挙げると、チームごとの勝率が最低でも40%を切らない程度までマッチの品質を確保しており、ロールキュー全マッチの80%において勝率は45~55%の範囲内に収まっています。

もちろん、実力が同等なプレイヤーだけを揃えられれば、それに越したことはないのですが、「MMRが特に高い」、「オフ・ピークの時間帯やプレイヤー人口の少ない地域でプレイする」などのような、プレイヤーが集まりにくい条件が絡むと、MMRが近いプレイヤーを10人集めるのは極めて困難です。これは、現在でも時おり発生する、待ち時間の大幅な変動にも大きく関係しています。

過去には、この状況へ対処するために、マッチングするMMRの範囲広げたこともありますが、その結果はというと、皆さんもお察しのとおりマッチのバランス悪化へとつながり、せっかくの「OW2」の面白みが削がれてしまいました。私たちは今後も、待ち時間とマッチ品質のバランス向上に向けて、これら2つの要素のトレードオフを分析しつつ、システムのさらなる調整に努めていきます。

スタジアムについて

ここまではライバル・プレイを含む従来のコア・ゲーム・モードに関するマッチメイキングの裏側をたくさんお話ししてきましたが、今度はスタジアムのマッチングについて詳しくお話ししたいと思います。

スタジアムにおけるMMRとランクの関係性は、従来のコア・ゲーム・モードのものと比べると、まったくの別物です。スタジアムの場合、シーズンごとにランクがリセットされて、実力差を問わず参加者全員が最下位リーグのルーキーに参加。その後、マッチの勝利で得たスタジアム・ポイントの量に応じて昇格していきます。また、これには皆さんもすでにお気づきかと思いますが、スタジアムの下位リーグでは、勝利時に得られるスタジアム・ポイントの値が敗北時の減少値を上回っているため、比較的早めのランクアップが可能です。勝利/敗北チームのMMRの獲得/損失量の和をゼロ(零和)にする必要がある従来のコア・ゲーム・モードにはない、スタジアム独自の要素といえます。

つまりスタジアムだと、MMRとランクは直接紐づいておらず、ルーキー・リーグを基点にマッチを重ねることで本来の実力に見合った環境へと近づいていくわけです。MMRが同程度と評価されているプレイヤー2人が同じくらいの勝利数を挙げれば、スタジアムでのランクもほぼ同一になるでしょう。

このようにランク分けの仕組みが大きく異なるスタジアムでは、モード独自のMMR、あるいは参加リーグに基づいてマッチングを調整する必要があります。参加リーグに基づいてマッチングを調整すると、下位リーグで新人プレイヤーが高MMRのプレイヤーとマッチする可能性が出てきてややこしくなるので、今のところ私たちは前者に基づいてマッチメイキングを行っています。この方法だと逆に、新人プレイヤーが高ランク帯のマッチに紛れてしまうことがありますが、少なくとも各プレイヤーの実際の実力をMMRに反映したうえでマッチングすることが可能です。

この新人/高スキル・プレイヤーのマッチング頻度をさらに下げるべく、私たちはいま改善案を練っています。また、スタジアムでの待ち時間の長さにも注視していますが、こちらの改善にはまだ時間がかかりそうです。高スキルのサポート・プレイヤーは特に、元からロールが全体的に偏っているところに同スキル帯の人口の少なさという要素が絡んでくるため、長時間の待機を余儀なくされています。この問題を解決するためにも、待機時間に関する情報は改善プランが煮詰まり次第、さらに公開していくつもりです。続報にどうぞご期待ください。

それでは、今回はこれにて。この記事を通じてマッチングメイキングに対する理解が深まれば幸いです。ここまで読んでくださりありがとうございました。

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