2023年の「ディレクターの視点」も残すところ、あと2回となりました。今年最後の記事は年末直前の2週間後に、来年最初の記事は新年中にお送りする予定です。感謝祭のムードというのは、なかなか身体から抜けないものですね…。今年最後の記事の公開は、シーズン8の開幕直後とも重なります。シーズン8では、新ヒーローのマウガがデビューするほか、大規模なバランス調整が実施される予定です。今回はこのバランス調整について、その他の話題を織り交ぜつつ紹介していきます。
まず、ゲーム全体の調整について話しましょう。シーズン8では、ヒーローを変更した際に引き継がれるアルティメット・チャージ量が25%から15%に引き下げられます。チームも、ヒーローの変更を円滑するこの仕様を気に入っていますが、15%が引き継ぎの量として妥当だと判断しました。しかし、キルされた後に相手へのカウンターとしてヒーローを変更する戦略がほとんどの場合において有効という見方があることも確かです。この変更を通じて、引き継ぎ量の減少がヒーローの変更率に及ぼす影響の有無を確認できればと考えています。
次は、シーズン8で行われるヒーローへの調整についてです。タンクヒーローには、大きな変更をいくつか予定しています。
ロードホッグはシーズン7で実施されたリワーク直後、トップのパフォーマンスを誇るタンクの1人となりました。現在、彼の勝率は54%周辺で定着しています。皆さんから彼のアビリティに関するフィードバックをたくさんいただきましたが、シーズン8の開始時点で、ロードホッグに変更を加える予定はありません。マウガは対ロードホッグともいえる要素を数多く持っています。シーズン中盤のバランス調整の方針を決める前に、メタがどの辺りで定まるかを見ていきたいと思います。
プレイヤーがドゥームフィストのアルティメットを純粋に回避技として使用している場面を目にします。相手チームではなく、ライフ・パック目掛けて意図的に「メテオ・ストライク」を発動する様というのは、少々残念な光景です。そこでシーズン8では、飛翔中にライフが毎秒75回復する仕様をドゥームフィストに導入します。アルティメットに加えるバフの辻褄は、コストを増やすことで合わせる予定です。
ラマットラの素のフォームには、タンクの「相手の陣地を割き、味方の陣地を確保する」役割に見合わない存在感のなさが目立ちました。この状況を改善するために、ラマットラのライフの100をアーマーに置き換え、武器の投射物のサイズと威力を大きくします。
ウィンストンは他のタンクと比べると見劣りする点が見られます。その理由の1つは彼のアビリティにあるのですが、あまりに現在のウィンストンが不利に感じられるため、状況を少し緩和したいと思います。シーズン8から、ウィンストンの「テスラ・キャノン」には、アーマーのダメージ低減効果を無視する仕様が適用されます。
次はダメージヒーローへの調整についてです。ソンブラへの変更点からご紹介しましょう。最近行われた大規模なリワークの甲斐もあり、ソンブラが置かれた状況は改善していると考えています。ランクにもよりますが、彼女の勝率は現在、45~48%で安定しています。とはいえ、彼女のアルティメットのパフォーマンスはいまだに想定を下回っています。そこで、「EMP」のダメージ量をライフの最大値の30%から25%に減らす代わりに、「EMP」を受けた際のアビリティの使用制限の時間を1.5秒から3秒に増やしたいと思います。これにより、ソンブラのハッカーとしてのアイデンティティにより近い仕様となり、アルティメットの効果もより鋭く感じられることでしょう。
ソルジャー76はシーズン7でも大活躍しました。オールラウンドでプレイでき、自己回復能力も持つため、相手側からすれば、かなり厄介な交戦相手でした。そこで、回復能力を維持する代わりにクールダウンを15秒から18秒に延長することで、相手側の反撃の機会を増やしたいと思います。
トレーサーの「パルス・ピストル」にも調整を加えます。この武器には「今のダメージ量っていくつだっけ?」と疑問に思う方がいてもおかしくないほど、何度も調整を加えてきました。現在のダメージ量は1撃あたり5.5なのですが、これがシーズン8では6に戻されます。じつは、これまでの5.5という数値は、ピストルに生じていた減衰率と拡散率のバグを考慮したものでした。この度、バグが解消されたので、以前の数値に戻すことにします。
次は、サポートヒーローに加える変更の内容です。ブリギッテは前回のパッチ以降、最高のパフォーマンスを発揮するサポートヒーローとなりました。皆さんからも、彼女を選ぶ必要性がかなり増してきているという意見をいただいています。そこで、ブリギッテを本来の立ち位置に戻すために「ウィップ・ショット」のダメージ量を戻すことにしました。バティストが秘めている攻撃力にも注目しています。こちらに対しては、メイン攻撃の弾薬数を45から36に引き下げることで対処する予定です。
ここからは、前回の「ディレクターの視点」でも触れた内容についてお話ししたいと思います。正確には、クイック・プレイの途中離脱率についてです。マッチの放棄数が多いプレイヤーを対象としたペナルティを最近導入した結果、マッチの放棄率は大幅に低下しました。このペナルティについては、クイック・プレイにはペナルティを気にせずに離脱できる余地を残してほしいというものを含め、さまざまな議論が交わされています。クイック・プレイで遊ぶ理由は人それぞれです。クイック・プレイをシリアスに考える人もいれば、ヒーローのテスト場と捉える人や「オーバーウォッチ」をカジュアルに楽しめるモードとみなす人もいます。このゲーム・モードをすべてのプレイヤーの要件にあわせて調整することは至難の技です。過去には、プレイヤーのシリアス度に応じて適切な環境を提供するために、3つ目のメインのキューを作ろうかとチーム内で議論したこともありましたが、プレイヤーがプレイスタイルに応じて適切なキューを自ら選ぶとは限りません。
クイック・プレイにも途中離脱のペナルティを導入した理由は、マッチの質に関わらず、頻繁に途中離脱するプレイヤーが他のマッチ参加者に与える悪影響が明らかだからです。プレイヤーの中には、参加したマッチの90%以上で途中離脱する人もいます。故に、単純で明確なポリシーを適用することがもはやできない状況なのです。途中離脱したマッチが4分の1くらいに達して初めて軽度のペナルティが発生する現在のポリシーは緩い…いえ、まだ緩すぎると言えます。マッチの質をいま以上に高められるよう、今後もこのポリシーを調整していくつもりです。ただし、ランクプレイほどに厳しい制限は設けないつもりなので、そこはご安心ください。
今週の「ディレクターの視点」は以上です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。また、ゲーム内でお会いしましょう!